義理父のひげを剃る。

2021-06-26 (Sat) 04:40 ✎

義理父のひげを剃る。

鳥は、空が青いことを知っている。

　　　ー嫁の私ー

アルツハイマー型認知症義理の父おとん中ボケ期。
在宅介護中嫁の私です。

私のブログをみつけてくださり
ありがとうございます。

気がついたことを書いてます。

只今おとんは、右手を骨折中。
ひげぼーぼー。どうする私。

あなたは、父親のヒゲを剃ったことありますか？

「おとんの髭を剃る」

今日こそやる。

おとんの口の周りに、生えた毛を剃りおとすぞ。
わたしは腹をくくった。

今日まで、男の人のひげを剃ったことがない。

恐れながらわたしは、T字型カミソリをにぎる。

くさったモヤシの臭いがする。

決意を前に、私はこころが折れる。

おとんに近づこうとすると、私の鼻が、拒否するのだ。

ひげを剃るまえに、おとんに歯みがきをお願いしよう。

おとんは、くちに歯ブラシを入れたと思ったら
２～３回、動かしやめる。

利き腕の右手は、ギプスでつかえない。

左手では、何かと不便なのだろう。
ハッカ水で、うがいしてもらう。

こんなことで、時間をとってては、いけない。

私のやる気が、あるうちに、剃ってしまおう。

こころあらため、自分の手を、石けんで、あらい清める。
そのあと、両手にビニール手袋を、はめた。

マスクは、もちろんつけている。

もう、ここまできたんだ、剃ってやる。

固形石けんを泡立て、おとんの口の周りに
こすりつける。

私は、T字型カミソリを、右手に持った。

左手で、おとんのあごを、つきあげる。

「おとん、いくよ」

あごの下から、くちびる手前まで、いっきに
カミソリをすべらせる。

おとんのひげは、ジョリジョリと音を立て倒れてゆく。

「カイカン」

私の脳が、どんどん剃れとすすめてくる。

ジョリジョリと快適に、ひげと私の悩みは消える。

ひげを剃る、そらないで、自分と格闘した１３日間。

剃ったことがないから、やりたくない。

けがを、させるのではないかと、恐かった。

けれど、私はやりとげたのだ。

おとんのひげを剃ることができた。

モジャモジャだったおとんは、つるつるに満たされる。

「すまんな」ぼそりとおとんがささやく。

これからもわたしは、剃ってあげようと自然に気持ちは固まった。

おしまい。

ここまで、お読みいただきありがとうございます。